博士(工学) 京都大・院・工 教授

専門分野材料力学、機械材料、金属疲労、破壊力学
研究課題/長期安全・安心社会への機械システム分野からの貢献
研究課題/短期構造物の破壊防止技術のさらなる発展

研究テーマ 構造材料の破壊機構の解明とそれに基づく破壊防止技術の研究

社会の安全・安心は各分野からの不断の努力によって維持、向上されてきた。日頃はその恩恵を感じにくいが、災害や事故・事件が発生したときに痛感する。機械システム分野からも、安全・安心社会の維持・向上に貢献すべきことは言うまでも無い。この長期的研究課題の下、まずは今までの研究経歴を活かし、構造物の破壊防止技術のさらなる発展を短期課題としている。

 具体的には鉄鋼材料を初めとする構造材料の破壊防止技術について研究している。一般に金属材料の破壊は、延性破壊、脆性破壊、遅れ破壊、疲労破壊などに分類されることが多い。延性破壊や脆性破壊は活発な研究活動の成果によりある程度克服されつつある。それに対し、疲労破壊はわずかな荷重でも発生することや初期損傷領域が極微小部であるため、長年に渡り多大な検討がなされているにもかかわらず完全には解明されているとは言えない。

 疲労破壊過程をき裂の発生とその後のき裂進展に分けることがある。き裂の進展に対しては図に示すような改善メカニズムで進展抵抗の高い鋼材を開発した。一方、き裂の発生に対しては、例えば溶接施工された場合など、材料からの疲労特性の改善は難しいと見なされてきた。疲労き裂発生特性に優れた材料開発という極めて高いハードルに対し、永らく立ち向かってきた。最近になって漸く解決の糸口と思われる現象を把握できた。社会の安全・安心のみならず省エネにも直接寄与し得る構造材料の疲労特性改善に引続き邁進したい。

金属組織で疲労き裂進展を抑制するメカニズムの模式図